第1章
「梶くん、こんな所で何してんの?」
俺たちは、今絶賛売り出し中の後輩に声をかけるため、少しだけ方向転換してベンチの方へと歩いて行った。
少しうつむき加減でスマホをいじっている梶くんは、下を向いて縮こまっているせいか、いつもよりも小さく見えた。
「かーじーくん!」
気づいていないみたいだったので、もう一度声をかけてみると、パッと彼は顔をあげた。
大きな丸い瞳が見開かれていて、何だか少し、いやかなり、びっくりしているように見えた。
その瞬間、俺の思考は一瞬止まった。
「え?!梶くん…じゃない??!」
「小野くんっ、この子、梶くんじゃないっ!しかも男ですらないっ」
神谷さんの高めの声が、とっさの状況だというのに、的確に状況を説明していた。