第1章
はぁ~、今日も可愛いなぁ~と思いながら見つめていたら、が大きな目でじいっと見つめ返してきた。
「アイス食べたい」
その口調には、”おねだり”というよりも、”指令”といった雰囲気が漂っていて、有無を言わせず従わせるような力があった。
「…分かったよ。アイスじゃないけど、あそこにジェラート屋さんがあるから、買ってくるよ」
「やった~!ジェラートジェラート」
無邪気に喜ぶ、超絶可愛い。あぁもう、頭をワシワシ撫で回したい。
髪が乱れるから、外でやると怒るけど、家の中だったらあんまり怒んないんだよな。
たまに虫の居所が悪い時にやるとキレるけど、子猫が唸り声を上げているみたいに見えるから、結局それも可愛く見えるんだよな。いやもう天使かこの子は。
「じゃ、そこのベンチにでも座って待ってなよ。味は?」
「チョコ!」
間髪入れず迷いのない返答に、思わず唇の端が上がる。口元だけじゃなくて、といるといつも顔面は緩みっぱなしだ。
仕事は忙しいし、体力的にきつい時もたくさんあるけれど、の顔を見ているとそんな疲れも吹き飛んじゃうんだよなぁ。ずっとこんな時間が続けばいいのに。
昔同僚に、休みの日に何して遊んでいるのかと聞かれた時、素直に本当の事を言ったら、
『休みの日に妹と遊んでんの?彼女作らないの?』
なんて言われたことがある。
は?彼女?彼女がいたら、妹とは遊ばないだろ、ってこと?
分かってないんだよ。これだから双子の妹のいない奴は…。
いいか?双子の妹というのは、普通の兄妹とは全く違う。それは同胞であり友人であり、生まれた時からの相棒であり、自分の分身とも言える相手なんだ。
彼女ができたら、そりゃもちろん大切にするよ。だけど、どっちの方を優先するとかじゃないんだ。
父さんと母さん、どちらかの方を大切にするなんてことないだろ?どっちも同じくらい大切にする。そういうことだ。
燦々と照りつける日差しが眩しくて、俺は手で目元を隠しながらジェラート屋へと小走りで向かっていったのだった。