第2章 対照
ぼんやりと、霞がかった思考で考えるのは、あの人の事。
昨晩も、キッドは予告通り博物館に姿を見せた。
ニュース中継を見て、私は思わず夜の街を駆け出し。
群衆の内に紛れ、彼を見上げていた…
どうしたら、また彼に会えるだろうか。
昨日みたいな群衆の内の一人じゃなくて、あの夜みたいに。
私であると、認識して貰えるような――
「えー、片仮名の起源だな。
9世紀初め、僧たちの間で漢文を和読するために…」
はっ、と先生の声で我に返る。
気付けば授業が始まっていて、ちゃんとしなきゃと姿勢を正すけれど。
先生の声はどうも眠気を誘う…
目線を下げると、机の前方に私のノートが置かれていた。
ご丁寧に表紙に貼られた付箋をペラっと剥がし、丸みのある癖字に目を通す。
『橙子、サンキュ。寝るなんて珍しいな!!』
自分の眠気を棚に上げ、そんな事を書いた前の席の彼が、うつらうつらと船を漕いでいるのを横目に捉えた瞬間だった。
先生がコツコツと足音を立て近づいてくるのに気付き、ノートを急いで開き姿勢を正す。