第2章 対照
「という訳で、黒羽。
この漢字から生み出された片仮名は何か、分かるか?」
黒羽くんは真横から呼ばれたのに何とか気付いたようで、緩慢な動きで頭を上げた。
私も一瞬意識を飛ばしていた負い目があるからか、まるで自分が当てられた時のように…胸が痛む様な心地で、先生が黒板に書いた文字をじっと見る――
「ぐー…ふが?
…あぁ…『ウ』ですね」
「…正解だ。宇宙の宇、から一部が切り取られ、『ウ』という文字が作られたとされている…
お前、寝てたんじゃなかったのか」
教室中でどっと笑い声が上がる中、私はただ一点を見つめていた。
居眠りしているのをわざと当てたらしい、教師が悔しがっているのも、寝ていたはずの黒羽くんが、瞬時に答えを導き出せたのも、
もう、全てが思考の端に追いやられて――
(…これ、だ)
もしかしたらあの人に会えるかもしれない、と。
私は大きな賭けに挑む事に決めたのだった。