第2章 対照
「どうぞ、黒羽くん。
たまには自分でやってきた方がいいんじゃない?」
「いやー、昨日も新作のマジックが思いつきそうだったんだよ…完成したら橙子にも、」
「いいえ、いいわ」
「…そーですか。ま、ありがとな!」
黒羽快斗は、来週が誕生日らしいクラスメイトの内の一人だ。
中森さんの幼馴染で、マジックが得意で。
どちらかと言うと勤勉とは真逆の性格をしている、典型的な男子高校生だ。
そんな彼の大の特技を無碍にあしらってしまったけれど、マジックならあの人の方が凄いわ…
なんて、心の中で答えたものの。
何でもあの人と比べて難癖つける、自分も黒羽くんのことをとやかく言えたもんじゃない。
余程子供めいているな、とほんの少し後悔する…
私の小さな罪悪感を気にも留めない様子で、彼はひたすらノートを書き写す作業に勤しんでいるらしく、ペンを動かす音がひっきりなしに聞こえてくる。
私はまた欠伸を堪えながら頬杖をつき、外を眺めた。
月光と違って、太陽光は目にしみる…
「っだー、終わんねー!!!」
そしてあの人、とは正反対の騒がしい声を聞いていられなくて、ほんの少しだけでもと目を閉じた。
そう言えば黒羽くんの目の下にも、寝不足らしいクマが出来てたな、なんて思いながら――