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【黒羽快斗生誕祭】クリムゾン・ブロッサム

第2章 対照






「ごめんなさい、その日はちょっと」
「えー!そうなんだ…残念だね」



しょんぼりと肩を下げ去っていく中森さんを見送り。
私はふう、と息をついて漸く席についた。


朝登校してきてすぐに、いつにも増してテンションの高い彼女に絡まれ。
『来週は快斗の誕生日で、クラスメイトで集まってパーティーをするの!』だなんて…
元々どうにも気乗りのしないお誘いではあったが、すっぱり断ったのには流石に罪悪感が込み上げる。


なんだかどっと疲れた気がしつつ、一時間目は古典だ…
分厚い教科書を出すと、丁度予鈴が鳴り。
鳴り終わったと同時に、前の席の彼が駆け込んできて、セーフっ!と大声を上げガッツポーズ。


そして振り向きざまに、ぱん、と手を合わせ頭を下げた。



「橙子!頼む!課題見せてくれよ、な!」



呆れて空いた私の口から、かみ殺せなかった欠伸が零れる。
来週誕生日だと言う彼は、きっと一つ年を重ねた所でこんな風なのだろう。
紳士なあの人とは大違いだ…と、独りごちる。


頭を下げていた彼…黒羽くんは、ちらり、と顔を上げこちらを見た。
その心許ないような、しかし貸してくれると何の疑いもないような…人たらしな表情にほだされる。
頬を掻く彼を小さく睨みつつ、ノートを差し出した。


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