第1章 邂逅
「我が館、秘蔵のお宝がーー!!!!」
お父さんがそう叫んで膝から崩れ落ちたのに、つい気を取られ。
一斉に宝石に向かい駆け出す、警察官達に揉みくちゃにされた身体がぐらり、と傾く。
転ぶ、しかも頭から――
そう思い、咄嗟に目を閉じた、その瞬間。
「大丈夫ですか?お嬢様」
若い警官が、後ろからぱっと手を出して支えてくれた。
にこやかに笑いながら、彼は私が体制を立て直しやすいよう、力を貸してくれる。
「あっ、…ありがとう」
イケメンだな、なんて、ほんの一瞬思ったけれど。
やはり行く末が気になって、宝石の元あった場所へと視線を戻した、その時だった。
「そう、その美しい眼は開けたままにしておいた方がいい…
これからが、メーン・イベントなんですから」
後ろからかけられた、背筋をなぞっていくような低い声に、弾かれるように振り返る。
先程までの警官の姿はもう無く、一体いつ姿を変えたのか?
白いタキシードを身にまとった男が、見覚えのある真紅の石を摘んで立っていた。
その片目を覆うモノクルが、差し込む月の光をぎらり、と照り返すのに目を細める。