第6章 回答
「少しくすんだ、大人びた紅のワンピース。
まさに、『クリムゾン・ブロッサム』に相応しい」
小声でそう囁く彼に、一度帰宅して着替えた甲斐があったものだ、とほくそ笑む。
しかしそこに、この雰囲気と闇を引き裂くような、悲痛な叫びが響き渡った。
「キッドーーっっ!!
盗みばっかり繰り返して、あなた一体何を考えてるのよっ…!橙子ちゃんを返しなさいっ!!」
…中森さん。
私がそう小さく呟くと、抱えられている腕に、ぎゅ、と力が込められる。
仰ぎ見た彼の瞳は、いつかのように寂しさに覆われているように見える…キッドは私の視線に気付くと、それまでの様に飄々とした面持ちに変わり。
「ご友人が心配していますよ。
貴女とのデートは惜しいですが、帰られますか」
そんな風に、およそ心根を隠しきれていない声音で言うものだから。
そうか、だからあの時からずっと気になってたんだ、と声に出しかけた、言葉をぐっと飲み込む。
記憶に残る、初めて会った時の寂しげな表情と、それから――