第6章 回答
「申し訳ありませんが、お嬢様。
怪盗は盗むのが商売…貴女の心を知らずの内に盗んでしまったことは謝りますが、私自身は盗まれないのですよ」
「なら、責任をもって盗みきってほしいものです…身も心も」
え、と素っ頓狂な声が聞こえてきて、今度は我慢しきれずに、思わず笑ってしまいながら。
かちゃり、とポケットから隠し持っていた無線機を取り出し、スイッチをONに切り替える。
「Ladies and gentlemen!
さぁ、ショータイムはここまでです。紅蓮の花弁は頂いた」
出来る限り彼の口調を真似た、館内放送のスイッチをoffに切り替える。
キッドは私の振る舞いに、困ったように眉を下げ、ぽり、と頬を掻いた。
既視感のあるその仕草に、私の記憶は目まぐるしく逆回転を始める。
怪盗キッド、らしからぬその仕草は――
「やれやれ、困ったお嬢様だ。
私はまんまと罠に嵌められた、という訳ですね」
ばたばたと警官たちの足音が迫って来ているのに、恐らくとっくに気付いているキッドは、しかし余裕の表情を崩さずに、私の手を引き。
横抱きに抱えると、ワイヤー・ガンを使って元の時計塔まで軽々と飛び上がった。