第6章 回答
そこまで言い終わると、しかしキッドはふっと口角を上げた、意地の悪い笑みを浮かべ。
ひらり、と音もなく私の目の前に飛び降りた。
白いマントがぶわっと風に煽られ、視界を覆うように広がる。
「いや、また、ではありませんでしたね。
先日の予告現場にも、その前も、貴女はいた」
「…気づいてらしたんですか?」
「奇術師は観衆の注目を集めながら、それ以上に彼らの表情、顔色に至るまでよく見ていないといけない…
父の教えなんですよ」
自信たっぷりに見下ろしてくる私より少し背の高い彼は、何が目的ですか?と尋ねた。
不思議に思っても仕方ないよね、と、奇妙な逢瀬に笑いを堪えながら、口を開く。
「貴方が、欲しかったので」
素直に、偽りなくそう答えると。
彼はほんの一瞬、不自然なほど目を真ん丸く見開き…しかし次の瞬間には、いつも通りのニヒルな笑みを浮かべている。