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【黒羽快斗生誕祭】クリムゾン・ブロッサム

第6章 回答





そこから、ほんの少し遡った十一時丁度。
私はその時計台の鐘の音を、目の前で聞いていた。
人っ子一人いない裏庭から見上げる月は、不思議といつもより大きく見える。
魅入られたように月を見上げ、そして何の気もなしに、鳴り終わった時計台へと視線を戻す…



先程までは、誰もいなかったはずなのに。
塔の三角屋根の先端に、白いタキシードを翼のように靡かせ佇む姿。
私も諦めかけていたその姿に、思わず息を飲んだ。



「…キッド…!」


「ご無沙汰しています、お嬢様。

…この度はお招き、誠にありがとうございます」



驚く私に、シルクハットを取り、悠々とお辞儀をするキッド。
流石、私の仕業だとバレているらしい…彼は少しばかりの笑みを湛え、口を開く。



「宇、からは片仮名の『ウ』

そして今、からは『ラ』
…流石に『ワ』は思いつかなかったようですね」



くすり、と笑うキッドに恥ずかしくなりながら。
彼だけに暗号が通じたらしく、周りに人がいないことに安堵の息を吐いた。



「宇今仁分…
それぞれの漢字に含まれる片仮名を繋げると『ウラニハ』

裏庭、にお招き頂いたので参上しましたが、どうやら読みは間違って居なかったようで。
またお会いできて、光栄ですよ」


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