第5章 前哨
「…そうなのか」
「そっか!なら安心だねー!」
中森さんの答えに隠れて、黒羽くんがボソリ、と呟いた声を気にかける暇もなく。
彼女が持っていた、新聞の切れ端をばっと目の前の机に広げた。
「橙子ちゃんはどう思う?この漢字の並び!」
『宇今仁分』の4文字を、彼女はじっと食い入るように見つめている。
黒羽くんはほんの一瞬、そちらに目をやったけれど…すぐに興味がないのだろうか、視線を逸らした。
「うーん、うこんじんふん…ういま…うー」
「青子、お前の親父さんもインタビューで言ってただろ?
完全無欠の大怪盗、キッドだってミスタイプくらいするんだよ」
「そうなのかなー…でも、快斗もこういう謎解き得意だもんね。
快斗がそういうなら、そうなんだろうなぁ」