第4章 相似
「そんな…橙子ちゃんは、理由があったら盗みをしてもいいって思ってるの?」
「中森さん、そうとは言ってないわ、けれど…」
言いかけて、また黒羽くんと目が合った。
驚いた様に、真ん丸く見開かれた目がじっとこちらを見ている。
ムキになっている自分に気づき、恥ずかしくなって言い止めると、良いタイミングで予鈴が鳴り響いた。
「ほら青子、橙子が困ってんだろーが。
さっさと座れよ、な?」
「あっ…私ったらごめんね、橙子ちゃん!」
「…いいえ、私こそ。変な事を言ってごめんなさい、中森さん」
「ううん!じゃあ、私は席に戻るね!
快斗、ちゃんと授業聞くんだよー!」
ばたばたと慌ただしく席につく中森さんを横目に、小さくため息をつく。
黒羽くんも同時にため息をついたところで目が合う。
今日はよく目が合うな、なんて思っていると、黒羽くんも同じことを思ったのだろうか?小さく笑いながら、しかし困ったような面持ちで口を開いた。
「ごめんな橙子…
あいつ、事件や事故の事となるとムキになるからよ」
「私が変な事を言ったからよ、気にしてないわ」
「…そっか。なら、よかった」