第3章 謀略
お父さんが机の上にひらり、と広げた予告状の中身を、私はよく知っていた。
警部さんがそれに目を通し、最後のサインまで読み終わった所で目を閉じ…奴のものに間違いありません、と神妙な面持ちで語るのを笑わなかった、私を誰か褒めて欲しい。
「ところで警部、これは何でしょう?
この、いつもどおりの予告文の下…暗号のような文字があります」
「んー…?次の満月の晩、紅蓮の花弁を再び頂きに参上します、怪盗キッド…紅蓮の花弁、は『クリムゾン・ブロッサム』だとしても…
宇今仁分…うこんにふん?」
警部は顔を顰め、予告状を裏返したり逆さにしたり。
隠された意味を見出そうと必死だけれど、とうとう諦めたように予告状をお父さんに返した。
「私の見たところ、特に大した意味は無さそうです。
ミスタイプのようなものでしょうな」
「そうですか、安心しました。
次の満月の晩と言いますと、20日か…来週の半ばですね」
「えぇ、警備は我々にお任せを!」