第3章 謀略
お父さんにごめんね、と心の中で呟きながら。
警備について話し合うらしいタイミングで、応接間を後にした。
リビングのテレビをつけてみると、どこから情報が漏れたのか…予告状の文面がニュース速報で流れている。
もちろん、あの謎めいた四文字も一緒に…
きっとこれで二十日の夜は、うちの美術館をたくさんの野次馬が取り囲んでしまうのだろう。
怪盗キッドの名を語り予告状を出したのは言わずもがな、私だ。
きっと気高く誇り高いあの人の事、偽の予告状を払拭しに現れてくれる、と信じて…
父親を心配させ、色んな人に迷惑をかけて、どうかしてる事くらいわかっている。
――それでも、あの人に会いたい。
あの夜のような、満月のもとで。
ただその一心なのに、と…誰にともなく、言い訳しながら。
キッドを批判するコメントの流れ出したテレビの電源を、苦い気持ちで落とす。
ぶつん、と音を立てて切れた真っ黒な画面には、何処か決意じみた自分の顔が映っていた。