第3章 謀略
「なんですって!?キッドからの予告状がまた!?」
「そうなんです、中森警部…!どうかうちの『クリムゾン・ブロッサム』を守ってください!!」
そんな、父との電話でのやり取りからものの数十分で、中森警部は我が家へと駆けつけた。
随分急いで来てくれたようで、額を流れる玉のような汗を拭う警部。
冷えたお茶を出してあげると、ありがとうございます、と一気に飲み干している。
そんな様子を眺めながら、ソファに座り沈痛な顔つきで俯く、お父さんの隣に腰掛けた。
――まるで、塞ぎ込んだ父親をいたわる娘、そのものの顔で。
「…しかし、キッドが二度同じ物を盗むとは前代未聞…」
「この前は石を落としたからでしょうか!?
警部、今回もどうぞよろしくお願いします…貴方だけが頼りだ!」
警部がご満悦に、お任せを、なんて言うのを聞きながら…あの人が捕まるわけない、と心の中で独りごちる。
そして父が頭を下げるのと同時に、私も神妙な面持ちでそれに倣った。