第9章 姫の気持ち
「おやすみ、。ごめんな。」
眠そうなに魔王はそういった。あと数秒で寝てしまうだろう。
聞こえているかどうかも怪しい。
が完璧に寝たのを確認して、魔王は一人つぶやいた。
「くそっ、こんな筈じゃなかったのに・・・。」
は暖かくて、ずっと一緒に生きていたくなる。
でも、無理なんだ。俺が魔王である以上。住んでる世界も置かれた立場も、何もかもが違う。
「俺がもし王子とか貴族とかだったら、もっと違う出会い方だったら、お前と一緒にいられたのかな」
いや、その前に“人間だったら”か。
俺はもうすぐ死んでしまう。なぜそれをが知ったかはわからないが、とにかく不安がっていることはわかった。
部屋に飛び込んできた時、の顔色は白くて、倒れそうな程だった。
俺に飛びついてきて、それからもずっと震えてた。
攫われてきた時でさえあんなに明るく振舞っていたが、泣いていた。
前に階段で話した時もそうだ。
は寂しくないかと聞いたんだ。
元気なさそうだから声かけたら、俺のことを心配してたんだ。
優しい奴。いつでも明るくて、他人のために一喜一憂して。
「俺、お前と一緒に、生きたかったな」
年甲斐もなく泣きそうになった涙を抑え、の頰にキスをした。これくらいは許してほしい。
と一緒には生きられないけど、はずっと笑っててほしい。の笑顔が、好きだ。