第9章 姫の気持ち
「あぁ、大丈夫だから、泣くなよ。」
「泣いてません。まだ、泣いてないです。」
“大丈夫だから”“心配しなくて良い”“お前は俺がどうにかするから”などと言いながら、魔王はずっとの頭を撫で続けていた。
頭を撫でる手がぎこちないのは、きっと魔王様も不安だからだ。
魔王様が死んだ後の自分の身が心配なんじゃない。
魔王様が居なくなってしまうんじゃないか、死んでしまうんじゃないかって、そう不安になっているだけだ。
いきなり入ってきた事への文句も言わず、魔王から離れないを心配して、ずっと頭を撫でてくれる魔王はどこまで優しいんだろうか。
最初は冷たい人だと思ってた。人間が、私のことが嫌いなんだろうなと思ってた。でも、違った。
こんなにも優しくて、今もを励ましながらずっと側にいてくれる。
が“暇だ”といえば多すぎるほどの玩具や本を与えてくれた。
が“遊ぼう”と言えば夜中までトランプをしてくれた。
が元気がなさそうであればわざわざ悩みを聞きにきてくれた。
(好き。魔王様が・・・好き)
自分の気持ちを自覚した時には、魔王様が死んでしまうなんてそんなの、信じられない。
目頭が熱くなって、涙が出てきた。魔王様の服が少しずつ濡れていく。
それでも、魔王様は“大丈夫”との頭を撫で続けた。
大丈夫とか、心配ないとか、それ以上のことは何も言わなかった。
「眠そう・・・ここで寝ても良いよ。別に何もしねーから。」
魔王様の声がいつもより優しい。
だんだんと眠くなってきた。
「明日、起きたら、全部、聞きますから。魔王様のこと、全部、教えてください。」
そう言ってはいつのまにか寝てしまった。
頭上から何か魔王様のこえが聞こえた気がした。