第9章 姫の気持ち
(魔王様は死なないわよ。私が・・・死なせないんだから)
無駄に広い館が今は恨めしい。
頑張って走っても魔王様のお部屋に辿り着かない。
実際の時間はほんのわずかだったが、焦るはずっと走っているような感じがした。
魔王の部屋の前に着き、ドアをノックもなしに勢いよく開けた。
背後ではドアが閉まるギィィという音が響いていたが、構わずに魔王の方へ走り寄った。
「ちょ、おい、お前ノックくらいし・・・」
魔王が何か言い終わる前に魔王の胸に飛び込んだ。
この匂い。この感じ。すごく落ち着く。
「どうしたんだよ、また何かあったのか?」
普段と違う気配を感じ取った魔王が「しょうがねえなぁ」といった感じででの頭を撫でた。
もう少しこうして居たかったが、それでは不安は解消されない。
「魔王様。」
小さな声を振り絞って出した。
「おう、なんだ。」
すぅっと一つ深呼吸をしてから、魔王の目を見て尋ねた。
「魔王様、病気かなにかなんですか。死んじゃうんですか。」
魔王がえっ、という顔をする。そして、気まずそうに顔をそらした。
「別に。お前には関係ないし。」
その言葉を聞いて、あぁ本当なんだ、と思った。
あはなんだか悲しくなって、もう一度魔王の胸に顔を埋めて「しなないでください」と言った。
泣きそうな声だったかもしれない。でも、の精一杯だった。