第1章 攫われた姫
(ここが私の部屋。なんだか狭いし、殺風景ね。)
何もすることが無い。暇だ。
誰かとお話ししたい。
その願望は、連れ去られてから一時間ほど経つと益々強くなった。
暇で暇で仕方がない。魔王でもいいから話し相手が欲しい。
それからさらに小1時間ほど経った。
(マントヒヒ、ヒマラヤ山脈、く・・)
の1人しりとりももう言葉が無くなってきた時。
扉がコンコン、とノックされた。
「はい!」
急いでドアに飛びつく。
すると、無表情なメイドが姿を現した。
「夕食のお時間でございます。」
「夕食?どこへ行けばいいかしら。」
「付いてきてください。」
久し振りに他人と会話できたのが嬉しくて、メイドさんの言葉に聞き入る。
「お食事は朝、昼、晩、全て旦那様と食べていただきます。」
「旦那様?魔王様と・・・。」
(魔王様、厳しいお方じゃないといいなぁ。)
姫は頭が悪いわけではないのだが、平和な城の中でメイドや家族に愛されて育ってきたので危機感が薄いのだ。
それに、今年16になる彼女に二時間程の時間は退屈すぎた。話し相手になってくれるというのであれば魔王だろうが誰でもよかった。
食堂に入ると、テーブルの奥に座る魔王と目があった。