第1章 攫われた姫
あの後すぐに眠らされたようで、目がさめると見覚えのない所にいた。
(ここは・・・・)
「起きたか。」
黒い服を纏った20代前半くらいの男の人。
顔はちょっとイケメン。
黒髪に黄色い眼。
笑みを浮かべてこちらを見ている。
(あ!そうだわ。この人は確か魔王様。私、攫われちゃったんだわ!)
「は、早く私を帰してください!お父様はきっと勇者をこちらへ向かわせるはずだわ。」
「攫った姫をそう簡単に帰すもんか。勇者ならば大丈夫だ。」
(大丈夫?どう言う意味かしら。)
その疑問は一度置いておき、魔王を見つめる。
「なんだ?見つめても帰してはやらないぞ。」
「どうして、ですか。」
「じきにわかる。」
この部屋はお前が好きに使っていいぞ。と言い残して魔王は行ってしまった。
居なくなったのを確認してドアノブを回すが、開かない。鍵がかけられているようだ。
仕方ないので部屋を見回してみる。
壁も床も灰色がかった白で、窓はなくドアが一つ。
桃色の布団がかかったベッド、石でできた机と椅子。
それ以外は何もない部屋。