第3章 姫の挑戦
ここで待て、と言われたがそんな事気にせず食堂の周りを歩き回る。
「あ、秘書さん!」
「あぁ、様。お早うございます。」
「魔王様は一緒ではないの?」
「魔王様は只今お手洗いへ。もうすぐいらっしゃると思いますよ。」
この館の中で魔王と攫われてきた姫の攻防は一種の名物となっていた。
都からは遠い遠い、よく言えば周囲に何もない、悪く言えば辺境に建つ館の中では小さな事だってスキャンダルだ。
「いいえ、いいのよ、それより。魔王様の今日のスケジュール、教えて?」
魔王はいつも館の中で何かをやっている。
だから忙しいわけないし、スケジュールも空くはずなんだけど。
「いえ、いくら姫さまといえどそれは、、」
「お願いっ!お昼周辺だけでいいからっ!」
少し考えた後、秘書はあくどい笑みを一瞬浮かべた後に
「いいでしょう。12時頃から14時頃まで、魔王様はスケジュールが空いていらっしゃいます。」
「そう、ありがとう。」
さっきの笑みはなんだったのかしら、と考えていると同時に2人の声が聞こえた。
「あっ、姫さま!こんなところに。もう、待っててって言ったじゃないですか。」
「2人で何を話しているんだ。俺がトイレに行っている間に仲良くなったのか。」
「いえ。魔王様、食事ができています。急ぎましょう。」
「そうだな。」