第6章 すっぴん
彼は全く手を緩めない。
それどころか、ギュッと力を強め、密着してしまっている。
「、ごめんね。」
「うん。はいはい、もういいよ。」
「ごめん…ごめんな。…ごめん。」
「分かったから。だから…」
(もう…いいから。)
そう言おうと思った瞬間、
彼が、あの日の謝罪をしている事に気がついた。
「ごめん、傷つけて…本当にごめん。あの時…。」
「ふっ、…何年前の話をし出すのよ、もう時効でしょう?」
「は、まだ俺を許してないじゃん。」
「なんとも思ってないよ、もう。」
「…じゃあ、怒ってないって言って。」
急に抱き起こされ、
抱きしめられながら、
座っている。
ギュッと背中に手を回されて抱きしめられている。
カカシは早く言って欲しいようで、全く私を離さない。
大きく溜息をついた。
(確かに謝罪を断ってきたしね…)
「カカシ、大丈夫だよ、もう怒ってないよ?許すから。
あんなキツイ言い方して、私の方こそごめんね。嫌な思いをさせたね。」
カカシの背中を
ポンポンと優しくタッチしながら、
子供にゆっくり慰めるように伝えた。
今日は本当に素直にスラスラ言える。何故だろう。
だけど、
私も彼に許すと伝えると、急に
自分の気持ちが軽くなった気がしたのだ。
言葉にする事は
本当に大事な事なんだなと改めて感じている。