第1章 覆される/黄瀬涼太
「ココ……すごく俺を欲しがってんスけど」
「うぅ…」
「めちゃくちゃトロトロ…」
「……黄瀬くんが…欲しい」
「なんスか?」
「黄瀬くんを…黄瀬くんだけを感じたい」
告白されて押し倒したときから既に堕ちていたのかもしれない。恋という尤もな道理、こじつけた論理では割り切れないものに。
「入れるっスよ」
「うんっ」
入り口に自身を少し入れるとクプッと音がした。ゆっくりと、少しずつ彼女の顔を伺いながら進んでいく。
「痛いっスよねっ」
「痛いけど……大丈夫っ」
「背中に手を回して…爪たてていいスから」
「うんっ」
時たま「いっ」と痛みを口にするからその度に止まる。だが彼女はそれも嫌みたいで「きて…?」と言われる。そうこうしているうちに、
「ハァ…全部入ったっスよ……」
「キツくてごめんね」
「はっ、なんスかそのセリフ」
「……私、黄瀬くんを好きになれてよかった…」
「……動くっスよ」
「うん」
情事が終わったら伝えよう。これからみょうじさんを知っていきたいって。
「あっ、ふぇ…んっ」
「痛いの、初めだけっスから!」
「だいじょ、ぶっ、ん…」
ゆるゆると抜き差しして何回目か。無意識にたてたであろう食い込んでいた爪がなくなり、変わりに腕を回されていた。これはある程度痛みが引いた事を意味しているはずで。
「あ、あん、黄瀬く、ん」
「くっ、なんスか」
「ん、…ごめんなさい」