第5章 第3者は初めからいなかった/黄瀬涼太
「んっ、あっやぁっ、激しっ」
「もう痛くないんスかっ?イヤらしいっスね」
妖艶に微笑む涼太の汗が私の頬に垂れる。その1滴でさえ愛しい。
「涼太、もっと…っ」
「っ?!まじなんなんスか……」
「ふぁ、あぁん、変になっちゃう…も、やっ」
「イキそうなんスねっ」
涼太がスパートと言わんばかりに突いてくる。彼の顔すら見る余裕もなくて、私はだらしなく口をあけて無意識に声を出していた。
「ほら、イケよ…っ」
「ひゃっはぁぁああん!!」
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気付いたら涼太の腕の中にいた。私は眠っていたみたいだ。
「……」
黄瀬涼太とえっちしちゃったんだ。
「ね、黄瀬涼太……」
そうだ。教室から一番近い空教室で情事を営んでいたんだ。扉を見ると鍵が掛けられていた。反対の窓を見ると夕暮れどきの景色。
「ちょ、黄瀬涼太っ起きて…」
「んっ…なんスか…?」
「帰らなきゃ」
「……随分と冷静っスね」
「……」
「俺のこと嫌いなんスよね?散々な目にあったんだし、一人で出ていけばいいものを……」
「……イライラはおさまったの?」
「……まぁね」
「ふぅん」
なんだか声の掛け方がわからない。さっきは出ていけばいいものを、って言っていた黄瀬涼太だけど、腕を解く気はないらしく身動きがとれない。私は無性に恥ずかしくなってきて顔も見れず俯いた。
「アンタ、やっぱムカつくっスわ」
「……私も」