『探偵』前世の記憶を思い出した時、彼は私の恋人でした。
第2章 記憶を思い出したら『松田陣平』の恋人でした。
私は明日のことがあるからと会社には急遽有休をとり、明日に備えたーー…朝一から陣平に連絡を入れる。朝の6時を回る頃、まだ眠そうな久しぶりの声に柄でもなくキュンキュンした。
「…都、久しぶりだな…で、まだ6時だぞ」
「陣平…助けて…」
「は?おい、なにかあったのか?」
「体がだるいのよ…そこまで辛いわけじゃないから、救急車を呼ぶなんてことはしたくないんだけど…一人で運転出来そうになくて」
どうにかならない?そう自分が最大限に出来るくらいの演技力で電話越しに吐息を漏らした。彼からすれば今日は萩原さんの命日である、私なんかの為に敵討ちの仕事の時間を放り出したくはないだろう…でも彼は優しくて男気のある性格だから、困っている人を放っておくこともきっと出来ないだろうと思った。最低だろうなと目を伏せる…案の定渋る声が電話越しから聞こえて来る。
「お願い…」
「っ、分かった…準備したら迎えに行く。少し待ってろ」
「うん…ごめんね…」
気持ちが下がる、結果的に陣平のことを助けるためだとしても私は嘘をついたのだ。そんな私が無鉄砲で真っ直ぐな彼の彼女とは釣り合わないなと苦笑いする。そして携帯の電話を切った。私が陣平を助ける、でもこんな私とじゃ彼と一緒にいられないのも事実だ…米花中央病院で解体する陣平の姿を目に焼き付けてから、私は立ち去ろうと自嘲した。
ーーー。
車で迎えに来てくれた陣平には大変申し訳なく思いつつも、しんどい雰囲気を出しつつ、だるそうな顔で笑って見せた。私の軽くないだろう体を横抱きにしてくれて、車まで運んでくれる彼はやはりイケメンである。不器用なのに優しいなんてキュンキュンするじゃないかと、車の中で思った。休日夜間応急診療を米花中央病院はやっているようで、私は朝からそこへ向かう。気持ちが擦り切れそうだ、助けられる保証はどこにもない。だけど惚れた男を、今でもやっぱり好きだから助けたいと思うのだ。こんな卑怯なやり方でしか助けられない私は、正義感の強い陣平を騙している。それがまた胸が痛い…泣くな、泣いたらバレてしまう。これ以上心配を掛けさせるな。そう潤む瞳を隠すように窓側を向いて俯いた。
ーーー。
時間も時間だから人がちらほらいる程度で少ない。その時に妙な紙袋が観葉植物の植木の後ろに置いてあった。随分分かりやすいところに置いてある場違いな物を見つめた。