『探偵』前世の記憶を思い出した時、彼は私の恋人でした。
第2章 記憶を思い出したら『松田陣平』の恋人でした。
「じ…陣平…」
「あ?どうした?」
「その…あの紙袋、怪しくないかなって…」
「はっ…?」
じっと紙袋を見下ろす陣平の視線が鋭くなったような気がした。サングラス越しに見ても、苛立つのは良く分かる。紙袋の中を覗くと数字がゆっくりと時間を刻んでいた。軽く舌打ちしつつ端を優しく丁寧に破りながら中身を確認する…案の定爆弾だった。
「どうしよう…」
「心配すんな、直ぐに終わらせる…こういう事はプロに任せな。都は体が辛いかも知れねぇけど、警察に連絡してくれるか?」
なるべく優しく問われる言葉と、撫でられる私の頭にじわじわと胸が熱くなる。看護師からハサミを受け取った陣平を見つめながら、私は警察へと連絡を入れた。耳に聞こえた声がとてもイケメンだった気がするが…内心焦っていた私は気が付かなかった。まさかミキさんこと萩原研二さんだとは思わないじゃないか…と後日談の私は語る。生きとったんか、ワレェ!!と内心桜満開で大歓喜でした。
ーーー。
陣平がいるから大丈夫だと思い、私は急いでタクシーを捕まえると遊園地へ向かった。平日だからか一通りは少ないが、家族連れや恋人などに溢れている。職員に向かって予約した弥刀という者なんですけど、観覧車は構いませんか?と尋ねた。とても驚いた顔をするが直ぐに営業スマイルを浮かべて「弥刀様ですね、貸切ありがとうございます…どうぞご自由に景色をご堪能下さい」と言われてしまう。いや…別に遊園地自体は好きでも嫌いでもなく普通なのだが、そう観覧車を見上げる。ただいま時刻は朝9時を回りそうになっていた。
ーーー。
時間が迫るも陣平は来ない。パトカーが溢れかえる、私は隠れながらに見守った。捜査一課のいつも画面越しから見ていた刑事達が揃い、特殊部隊を要請する姿を見た。爆発物処理班が来るのはまだ時間がかかるということと、別の爆発物が発見されたということで大半の特殊部隊がそちらへ向かっているような状態だった。私の作戦は上手く行ったようである、ゆっくり時間帯が迫り、上へ上へと昇って行きタイマーが過ぎて爆発した。
「そう言えば…こういう場合は、私が貸切にしていたし私が観覧車の出費をするんだろうか」
いや、まず私は一度たりとも乗っていないし、爆発物は私がやったなんていう証拠はない。そもそも先程まで病院にいた人間に出来る犯行ではないのだ。