『探偵』前世の記憶を思い出した時、彼は私の恋人でした。
第5章 記憶を思い出したら『萩原研二』の恋人でした。2
萩原が壊れた。最初都の荷物がなくなっていると俺に伝えて来て、遊びに行っていると一週間はそう思っていたらしいのだが、日に日に暗くなって行き、荒れに荒れた。沢山いた女を取っかえ引っ変えしていたが、直ぐに都と比べてしまうらしく長続きはしなかった。口を開けば都のことばかりで、酒を煽ると泣き上戸で絡んで来る。廃人のように仕事も上手くいかず、このまま大丈夫なのかと思っていたら急に真面目に仕事へ打ち込み始めて、タバコもぱたりと止めた。
「都の好みの男にならないとさ、次に会えた時好きだって俺から告白するために…」
「……」
こいつ、マジでヤバいかも知れない。このまま行くと俺が萩原を手錠にかけねぇといけなくなるな…なんて考えたのは内緒だ。まぁ…真面目に仕事へ打ち込んだら萩原はかなり優秀なのを周りも認めていたためか、寧ろ応援していた。
数年経ち、爆発物が会社のオフィスに仕掛けられていると報告を受ける。暑いからと着なかった防護服をちゃんと着ている萩原を見て、本当に変わったなと思う。いや…まさかその会社の社員に萩原の元彼女がいるとは思っておらず、写真も見せて貰っていなかったから俺自身も気が付かなかった。
合コンに俺と萩原が誘われた。この前の爆発物騒ぎで知り合いになったらしく、人数合わせとして言われたが生憎萩原が行かないなら俺も行くつもりはない。なにより萩原自身は都以外に興味がなくなった時点で参加するわけがなかった。
「俺はいいよ。欲しくてたまらないのは…この世でたった一人だからな」
「萩原が行かねぇなら俺もパス、明日も仕事だから酒飲めねぇしな」
「言えてる、俺も明日また仕事だしなー…」
真新しい携帯を握り締めて、愛おしげにメールを打つ。そこには当然名前はない。萩原をここまで変えた都という女にどうしても俺は会いたくなった。それにしても…もしもその都にもう別の恋人がいた時、萩原はどうなってしまうのだろうか。そう思うと少し会わせるのが怖い。後最近都に会えてもいないのに通販サイトを見て貢ぎたいとか、似合うだろうなと呟きながら見ている萩原に恐怖を抱く。
これは、降谷達に頼んでなにがなんでも萩原よりも先に都を見付け出さないとマジでヤベェ気がすると書類をぐしゃりと握り潰してしまった。