『探偵』前世の記憶を思い出した時、彼は私の恋人でした。
第5章 記憶を思い出したら『萩原研二』の恋人でした。2
「結構可愛い子だったんですけど…その女性が酒に酔っ払って気持ち悪そうにしてたから、面倒くさくなってそのまま放置して去っちゃったんですよね」
「お前、最低だろ…クソだな」
「松田さん、めっちゃ目怖いです…」
「萩原もなんか言ってやれよ」
「えっ…俺がか?いや…都以外どうだっていいしな」
「お前は本当に揺るぎねぇな。でだ萩原、それがお前の元恋人だったらどうだよ?」
「は?そんなの死刑に決まってるだろ?」
「萩原さんの目がマジだ…」
瞳孔開く萩原は、ブリキの壊れた玩具のようにギギギとこちらを向いて無表情に伝えて来た。新人は勿論のこと、上司達も震え上がらせる萩原の顔に都が絡むと見境なしだなと俺は苦笑い気味にサングラスを押し上げた。
また数年後…捜査一課へ配属になった俺は爆発物を解体していた。その時萩原から連絡があり、別にも爆発物が見つかったと伝えられる。そこには珍しく焦る萩原の声だった、しかし喜びを噛み締めるようなそんな明るい声に嫌な予感が過ぎる。
「松田!聞いてくれ!都が漸く見付かったんだ!」
「はっ?」
「熱っぽくて倒れちゃったんだけど、特に変わりなく元気そうだし…それでさ。都この数年に髪が伸びて、幼い顔立ちで今でも可愛いんだけど美人になってたんだよなーー…」
や ば い その言葉が頭を埋めた。というか連絡を寄越してくれた一般人って都だったのかと携帯を掴む力が入る。萩原の暴走を止められる降谷達はいない、早く解体して俺が萩原を止めないと大惨事が起こる気がすると爆発物に向き合う。残り時間3秒にメッセージが届くようだが、今の俺には関係ねぇ。萩原の暴走を止めることが今一番大事だ。
ーーー。
病室に寝込む都と寄り添うように、優しく手を握る萩原がいる。今の所なにもなさげでほっとする俺に向かって萩原は気付いたのか振り返った。
「松田、どうしよう…俺都に指輪用意してない」
「どこからどうツッコめばいいのかが分からねぇから、最初から教えてくれ」
先ず、俺はボケ担当だ。ツッコミは降谷や緑川に任せっきりだというのに、とんちんかんで都が絡むとポンコツになる萩原に頭痛しか起こらない。萩原としては至って真面目だから余計に複雑な心境で、胃がキリキリするのを耐える俺を誰か褒めて欲しい。