『探偵』前世の記憶を思い出した時、彼は私の恋人でした。
第4章 記憶を思い出したら『降谷零』の恋人でした。
後ろから聞こえるのは激しい爆発音と爆風。驚いたように目を白黒させる萩原さんは怪我を全くしておらず、他の処理班も早めに出て来たし防護服を着ていたからかなんとかなったようだ。
「え、えっと…君は?」
「名乗るものでもありませんよ。ただ…正義の味方になりたかった、そんな未成年です。それでは失礼します」
「えっ、ちょっ!?」
私は逃げるように走り去る。愛する人と、その友人を私は守れるのであれば、私はなんだって請け負う。大丈夫よ、バーボン。私が貴方の悲しむ全てから貴方を救うから…だからどうかその時は、貴方の手で私を殺してね?
私は生まれた時から組織の人間だ。心はないと思っていた。貴方に逢えた時から…私の灰色の世界は初めて色付いたのだ。手を汚した私が、正義の名のもとにいる貴方の傍には居られない。だから敢えて私は汚れ役を買って出る。次はスコッチね…彼は貴方の幼馴染だから絶対に救って見せる。例え貴方に殺したいくらいに恨まれたとしても。
ーーー。
数年後…私はネームドを貰ったウィスキートリオに出会う。そして前世にはなかったこの三人を監視するようジンに命じられた。言葉では鬱陶しそうに面倒だと伝え、肩を竦めて見せるが内心はありがたく思う。拳銃をジンに向けられ降参するポーズを取り、行くわよとやる気のない返事で三人を連れ出した。
「私は都…組織からはギムレットと呼ばれているけれど、普通に名前で呼んでくれると嬉しいわ。コードネームって好きじゃないのよ…」
「は、はぁ…分かりました」
「で、貴方達は?」
「バーボンです」
「スコッチだ」
「ライ…」
ふむ、やはりウィスキートリオか…そしてバーボンは変わっていないなと内心笑う。彼が私を知るはずがない、スコッチもライも…組織の人間も。誰もだ。なるべく当たり障りのない話しをして、今度仕事に向かうから今日は挨拶だけで解散した。
ーーー。
私は今、バーボンにハニトラを仕掛けられていた。ハニーフェイスの甘い顔で甘い台詞をはいて、慣れたように私の手を添える。彼は私を好きだという。また錯覚しそうになった…違う。彼は私を好きなわけじゃない。そう思うと胸が痛む…愛して欲しい。なんて組織の人間が考えてはいけない。私は彼の敵だから、愛しては駄目だ。
「バーボン…嬉しいわ、ありがとう…」
「本当、ですか?」
「えぇ、私達付き合いましょうか」