『探偵』前世の記憶を思い出した時、彼は私の恋人でした。
第3章 記憶を思い出したら『緑川景光』の恋人でした。
私から体を離させて、東先生を背負い投げで投げ飛ばした。拘束するように体を押さえた無表情な景光くんを見下ろしてやはり警察官なんだと思い、また会えたことが嬉しかったり、面倒ごとに巻き込んでしまったことが申し訳なくて泣いてしまった。
ーーー。
警察に逮捕された東先生は「僕は無実だ!ただ彼女を!都さんを守ろうとしただけだ!あの男が!邪魔をするから!!」なんて言い暴れながら連行されて行った。
力が入らない、座り込みそうになるところを抱きとめられて不安げに私を見下ろした。大丈夫だと頬を拭い精一杯笑うと、なぜかとても辛そうな顔をしてぎゅうぎゅう抱き締められた。
「あ、えっと…大丈夫、大丈夫だよっ」
「どう見ても大丈夫じゃないだろう!手首とか赤くなってるし、こんなに震えてっ!」
「…っご、ごめん、なさっ…」
「あ、ちがっ…そうじゃなくて…ご、ごめんな?」
泣くな、泣くな、泣くな…そう思っても涙が止まらない。彼に嫌われた。彼が好きだった。心が沈む、どうしていいか分からない。泣いたところで解決しないのに、そう景光くんの体を優しく押して笑った。
「もう大丈夫、ありがとう…」
「大丈夫って…」
「それで…緋色さんでしたっけ?助けて頂いてありがとうございました…」
「あ、いや…」
「あの、私…これで失礼致しますね?それじゃあ…」
「えっ!ま、待ってくれっ!」
私の手首を掴んだ、振り返ると酷く悲しそうな顔をする景光くんがいて私は上手く声を発せられなかった。
「あの…初めまして。俺…緋色光と言います」
「緋色、光…さん」
「貴女の名前を教えて貰えませんか?」
「っ…弥刀都です」
「都か、うん、宜しくな」
最初から、始めよう。そう友達から…なんて私は笑って「はい、こちらこそ」と呟いた。
ーーー。
※後日談。緋色光さん…もとい景光くんと仲良くなって数週間が経った。私は未だに彼に好きだと言われていなかったりする。私も恋愛に対して臆病になってしまったから上手く伝えられずにいた。しかし思うことはなぜ景光くんは私を引き止めたのだろう、同情したから?今更仲良くなったところで、面倒になるのは景光くんのほうだというのに…そんな彼とズルズル友達としてこれからも付き合って行くのだろうかと思うと、正直しんどかった。
「私と友達を止めて貰えないかな?」