『探偵』前世の記憶を思い出した時、彼は私の恋人でした。
第1章 記憶を思い出したら『萩原研二』の恋人でした。
私はやっぱり彼が好きなんだろうと思う。失いたくないと思った、生きて欲しいと思った。生きていて良かったと思った。様々な想いが駆け巡る、胸が痛い。ドクンドクンと悲鳴を上げている。良かった…そう落ち着いた時には涙が溢れた。涙がはらはらと落ちる…研二は困惑するように私を抱き締めようとしており、私はその手を振り払った。涙を頬に伝いながらふらりと立ち上がり走り去るように逃げた。そうだ…これで良かったんだと思う。私の荷物は昨日帰って来なかった研二がいないうちに全て鞄に詰めて、既に別のマンションへと業者へ運んで貰って向かっている。紙には書き置きで「ずっと大好きでした、さようなら」と泣きながら書いた。涙で文字が歪んでしまったけれど…些細なことだからきっと気付かないだろう。
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職場も辞めて萩原の連絡先も消した。数年経ったある日だ…流石は日本のヨハネスブルグと呼ばれているくらいの犯罪率である。私の職場に爆発物がっ!あるのだがっ!このフラグをどうねじ伏せようかと頭を抱える。上司が警察へと連絡を入れた、ということは必然的に爆発処理班の萩原とエンカウントするということだ。避難する職場の人と一緒に逃げる。まぁ…パッとしない私だし?恋人としても扱いは塩対応だったし?浮気する人は皆、美女ばかりだったからきっともう新しい恋人を探して幸せになっているだろうと思う。思い出して見てもお似合いだったし、未だに引きづっている私って一体。あぁ…私も新しい恋人が欲しい。美女に生まれたかった…世知辛い世の中である。避難させようと誘導する警察官と擦れ違う、それが防護服を着た萩原だとは気付けず、私も大勢の中で避難していたからか彼自身も私がここにいるとは気付かなかった。
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運命は狂い始める。私は今職場の人達と飲み会に参加していた、友人に参加して欲しいと頼まれたのである。しかし私は聞いていない、女子会と言ったのになぜか男性がいる、萩原ほどではないにしろ中々のイケメン揃いであるがこれはどう見ても合コンであった。隣にいる友人にこっそりと「これ、どういうことよ」と尋ねる。友人はニタニタ笑って「ごめんねー…数合わせで来て欲しかったのよ。それに都も彼氏と別れて数年経つって言ってたし、丁度いいじゃない?新しい恋人とか」なんて言われる始末だ。余計なお世話である…というかこんな時でも萩原を思い出す私って。