『探偵』前世の記憶を思い出した時、彼は私の恋人でした。
第2章 記憶を思い出したら『松田陣平』の恋人でした。
私の問いに、笑っていたが目の奥は笑っておらず…イケメンを怒らせると本気で怖いと思った。
「お前、この顔を見て怒ってねぇとかいったら今すぐ犯すぞ」
「ひぇっ…」
「で、さっきの男はどこの誰だ?二股かけて俺を捨てるのなら、監禁してでも俺の傍にいさせる」
「陣平怖い…考え方が既に犯罪者だよーー…後、あの人は私の職場の上司であっていかがわしい関係なんてないよ…仕事が忙しくてそれどころじゃないしさ」
「じゃあなんで急に音信不通になった、体調が悪いのに急にふらっといなくなって…どれだけ俺が心配したか」
足ドンを止めて、私は松田の胸へと抱き締められていた。懐かしい、ここ数年のうちに抱き締められたことすらなかったなとふと思い出す。煙草の匂い、彼の息遣い、早くなる鼓動の音に年甲斐もなくドキドキした。松田は私を力強く抱き締められてぽつり呟く。
「行くな…頼むから俺の傍にいてくれ」
ぎゅうっ!と胸が締め付けられるくらいに痛くなった。私が松田に釣り合わない、松田は松田の幸せを生きなくては…だって彼は生きているのだ。佐藤さんと幸せにならなくちゃいけないのに、私じゃ駄目だ。そう思うのに振りほどけない。彼の厚い胸板を押せない、嫌だと拒めない。
「じ、ぺぃ…」
「俺、お前がいねぇと…なにも手が付けられないんだ。都を病院に連れて行って、ずっとお前のことばかり考えてた…こういうの慣れてねぇだろうし、体調も悪いし余計に不安になるだろうからって、なのにアンタは解体作業を終えた時にはいなくなってるし…連絡は取れねぇし、家に行っても誰もいないし。本当心配させんな…」
「ごめんなさい…」
私の肩に顔を埋めて、松田は安心するようなため息をついた。私は手に持っていた手荷物を玄関の真下へ落として、そっと松田の背中越しへ手を回した。すると先程よりも強く抱き締められて少し痛かったりしたがとても幸せだった。
ーーー。
「お前さ…観覧車だけ貸し切りにするって結局なにがしたかったわけ?」
「えっ…なぜ、それを?」
「遊園地の職員から事情聴取したから変わったお客様がいたって言ってな…名前を聞いたら弥刀つーから、まさかかと思ったら案の定アンタだったわけだ。そんなに観覧車乗りたかったのか?それで観覧車が一つ爆発したけど、偶然にも誰も乗っていなかったって聞くし…爆発に巻き込まれたのかと思って」