第4章 夢と過去②
「休みが明けたら、上司に相談してみるわ。あの子の瞳や夢のことについても、調べてみる。だから…」
そんな顔しないで。麗は呟きながら和真を抱きしめる。
その様子を…凪は見ていた。
(わたしが、父さまと母さまを…しんぱいさせてる…)
少女は不安で震える体を抑えつけて想った。
(しっかりしなくちゃ…父さまと母さまにしんぱいかけないように、つよくなるの…)
凪はそっと布団に戻って目を閉じる。
小さな手を握りしめて、もう一度想った。
(つよく、なりたい。父さまと母さまを守れるくらい…)
『強くなりたいか?』
凪の頭に声が響く。
驚いて目を開けるが、そこには暗闇しか見えなかった。
またあの夢だと理解して、体に力を入れる。
『力が欲しいか?』
再び声が響いた。そして、遠くを一筋の月明かりが暗闇を照らす。
惹かれるように光に近付いた凪の頭に、また声が響いた。
『強くなりたいなら…』
月光の先に人影が見えた気がした。
『俺の名を呼べ』
凪は無意識に人影に手を伸ばす。人影が揺れる。
「あなたは…」
「凪ッ!」
突然訪れた頬への痛みと大声に、凪の視界がチカチカする。
しばらく瞬きを繰り返して、ようやく夢から覚めたことと…
頰を叩かれたことに気が付いた。
目の前の父と母の顔を呆然と見つめる。
母は息を切らして険しい顔をし、自分を叩いたのであろう父が、自分よりも痛そうな顔をしていた。
「と、うさま?…か…かあさま?」