第4章 夢と過去②
少し目を伏せていた麗が、和真を見る。
「そうね…帰ってきて驚いたけど、あの子、霊圧がかなり上がっているわ」
麗の言葉に和真は小さくそうか、と呟く。
死神である麗に対して、和真は全く霊力を持っていない男だった。
だから凪の霊圧の変化には気づけなかったのだ。
「…いつも言っているでしょう。自分を卑下しないで」
悔しそうな顔をする和真の胸の内を悟って、麗は悲しそうに微笑む。
「…凪の瞳の色が変わる理由は正直…わからない。夢を見た後に瞳が金色になるなんて話、瀞霊廷にいる間にも聞いたことないわ」
しばらくの沈黙が訪れる。
そして、再び麗が口を開いた。
「やっぱり、早めにこちらで預かった方が…いいのかもしれないわね…」
その案は和真が考える中で一番最善の案であると同時に、一番取りたくない案でもあった。
凪を麗に預けること、それはつまり、まだ四つの娘を真央霊術院に入れるということだった。
「私が凪の側でずっと見ていてあげたいけれど…私も隊で席官の座を預かる身。例え休隊願を出してもすぐに受理されるわけじゃない…」
霊力を制御できない幼い子がたどる末路…それは己の霊圧に耐えきれず潰れてしまうか、匂いに気付いた虚に喰い殺されるか。
残された道は限られていた。
「わかってる…」
自分には何もできない。それしか方法はない。自らに言い聞かせるように和真は呟く。