第4章 夢と過去②
二回目の夢を見てから十日後、麗は自宅へ帰ってきた。
「ただいま」
「おかえり」
久々に帰ってきた妻の額に和真がそっと口付ける。
少し照れたように笑った麗は、駆けてくる小さな足音に気付いて両腕を広げた。
「母さま、おかえりなさい!」
凪が母の胸に飛び込む。
我が子をぎゅっと抱きしめ、麗はほっと息をつく。
「久しぶりね。凪、和真、元気だった?」
麗の何気ない質問ににこにこしながら頷く娘に対して、夫は少し顔を曇らせた。
それに気付いた麗が目線で疑問を投げかける。
和真は困ったように笑ってみせた。
「まあ、とりあえず飯にしようぜ」
時間は緩やかに流れていき、夜が更けた頃。
母の帰宅にはしゃいだ凪はぐっすりと眠っていた。
健やかな娘の寝顔を二人で確認し、居間へ戻る。
「…今日はご馳走をありがとう。相変わらず手先が器用なのね。彩りもとっても綺麗で美味しかったわ」
麗がお茶を飲みながら口を開いた。
「まあ、ガキの頃から飴細工作りは手伝ってたからな。嫌でも器用にはなるさ。美味くできてたなら何よりだ」
「そうね…昔から和真の作るご飯の方が美味しかったもの」
少し拗ねたように言う麗を、からかうように和真が笑う。
しばらく談笑して、近況を語り合った。
麗が二回目の茶を淹れた頃、すっと和真の眼差しが真剣さを帯びる。
「…凪の事なんだが」
麗は和真の話を黙って聞いていた。
全て話し終えてお茶をすすった和真は、真剣な眼差しのまま妻を見る。
「…どう思う?」