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―BLEACH― 月明かりの下 (R18)

第3章 夢と過去①




凪は四つの時、初めてあの暗闇の夢を見た。
一人で右も左もわからない闇の中に放り出されて、幼い少女は震え上がる。
小さな己の体を必死に抱きしめ、夢なら覚めろ、早く覚めろと何度もつぶやいた。

その言葉は小さな寝言として、現実にも漏れていた。
凪の隣で寝ていた男が気付いて起き上がる。

「凪、大丈夫か?」

彼女の父、和真(かずま)はうなされている我が子の額の汗を拭き取りながら、体を揺する。

「…と、う…さま…?」

しばらく唸って、そしてゆっくりと瞳を開いた娘を見て、ほっとしたのは束の間。
今度は和真の額に汗が浮かぶ。

「お前…その目はどうした!?」

凪の左目が金色に染まっていたのだ。
まだ寝ぼけている娘の肩を掴む。

「父さんが見えるか?!痛いところはっ」

寝起きに飛んでくる矢継ぎ早な質問に、凪は少し顔をしかめた。

「父さま、肩が痛いよ…」

焦って無意識に力が入りすぎていた和真は、慌てて力を緩めた。
すまん、と言いつつも肩を掴んだ手はそのままに、娘の瞳をのぞき込む。
その左目はまだ金色をしていた。

「凪、俺のことが見えるか?」
「え?…う、うん」

質問の意図がわからないといった顔をする娘に、本人が自らの変化に気づいていないのだと悟った。

「痛いところも無いんだな?…なんでうなされてたんだ?」

前半の質問にこくりと頷きながら、凪は自分の着物の裾を握りしめた。


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