第1章 始まりは突然に
「あ、無くなっちゃった」
お昼休み、私は売店で飲み物を買ってこようと席を立つ。
「そろそろ五限目始まるから急ぎなさいよ」と瑞希からのアドバイス。
軽く返事をすると、少し小走りに売店へ向かう。
何買おうかな、と散々迷ったあげく、結局おしるこを選んだ。
甘いのが大好きという単純な理由で。
それに小豆って体にいいし、お餅とかテンションあがるしね。
売店と私のクラスとは結構遠くて、間に中庭を挟んでいる。
本当は校舎内を遠回りして向かわないといけないんだけど…
(急ぎだし、良いよね)
と、私は中庭を突っ切ることにした。
中庭にはいろいろな植物が植えられており、ちょっとした菜園などもある。
自由奔放に生えている彼らを踏みつけないようにひょいひょいとよけながらレンガの道を進む。
紅葉が始まっている木もあり、赤や黄色、オレンジなど色とりどりで思わず見とれる。