第1章 始まりは突然に
「あがり」
いつの間にか沙織さんの手にはカードが無くなっていた。
早いな、さすが沙織さん。 かという私の手持ちも三枚だけど。
「沙織、てめっ。いつの間に」
イライラするように言う会長の手には四枚のカードが。
「残念ながら僕も」
その会長から伊織さんがカードを取り、伊織さんもあがる。
残るは手持ち三枚の私と春樹さん、会長だ。
そして会長は春樹さんからカードを取ると二枚捨てる。 残り二枚。
春樹さんは私からスペードの5を取り二枚捨てる。 残り一枚。
もう勝ちが確定でもしたと思っているのか、カードをヒラヒラさせ鼻歌を歌う春樹さん。
この時点で私が持っているのはハートの7とクラブの1のみ。
ということは、会長か春樹さんのどちらかがジョーカーを持っているのだろう。
が、春樹さんの余裕っぷりを見ていると、恐らくシロ。私の予想だと…
「おい。凡子早く取れ」
イラついているのか、せかす会長。
おしるこ女→平凡女→(平)凡子、と会長の私の呼び名はコロコロと変わる。 まあ別にいいんだけどね。
会長が差し出すその二枚のカードの内、どちらかがジョーカーだろう。
ここは慎重にいかねば、と気合いを入れ改めて会長にむき直す。