第1章 始まりは突然に
「しっかし、タカがヒメちゃんみたいなタイプの子選ぶなんて珍しいよな」
トランプを個人に配りながら春樹さんが話す。
「うっせえ。誰が好き好んでこんな平凡女選ぶか」
吐き捨てるように言い放つ。
おしるこ女の次は平凡女、って…
まぁ確かに、自分がめっちゃ美人だとか可愛いなんて思ってないけど、いやむしろ私なんかの分際でそんな事思ったことすらないけど、そう断言されると少しへこむわ。
それに、よく考えたらここにいる皆(私以外)美形なんだもんな。
「い、いやでも俺は、ヒメちゃんのシンプル(=普通)で素朴(=地味)なところ、可愛いと思うよ!」
春樹さんはすぐさま慌てて付け足すかのように言う。
…それは、フォローのつもりなんだろうけど。
残念ながら、隠された意味が分かってしまって全然フォローになってません、春樹さん。
むしろ、傷が深くなった。
あれ? それなら昨日の、可愛い子ちゃん、ていうのは…
「ハル君の『可愛い』は信用しない方がいいわよ、誰にでも言ってるんだから」
配られたトランプをきっちりと揃えながら淡々として言う。
…沙織さんまで。
ナイフで二重に切り込まれた上に塩を塗りたくられた気分だ。
まぁ分かってたけどね。改めて自覚したって言うか…
あ、駄目だ。自分で言っててむなしくなってきた。