第1章 始まりは突然に
――――生徒会室前。
…勢いで来ちゃったけど、どうしよう。
この扉の奥にはあの悪代官が居るんだよね。
本当は行きたくないけど、かといって行かないとひどい目に遭いそうだし。
行くからにはやはり相手は先輩なわけだし、手土産に菓子折りとか必要なのかな。 うわ、全然気がつかなかった…
と、生徒会室前でウロウロしていると、
「あっれー?可愛い子ちゃんはっけーん」
廊下の向こう側から男子の明るい声が。
可愛い子ちゃん…?
キョロキョロと周りを見渡すが、私以外には生徒は見かけない。
ってことは、
「君だよキミ。 はい、つーかまえた」
「うおっ…!?」
不意に身体が拘束される。
ぎゅっ、とその誰かさんとの距離が縮まり、動けなくなった。
驚きで声が出ない。 何よりこの状態も謎なのだが。
真横から誰かさんの輪にした両手で私の身体をホルダーされている。
…ち、近い近い近いっ!
なにぶん、男性とは免疫がないもので、どう対応をすればよいのか分からない。