第1章 始まりは突然に
「いや、本当に! 私何も見てないですから、じゃあ失礼しま…」
と言って立ち上がって立ち去ろうとしたとき。
バサガサガサッ
…私の数センチ目の前には足が。
「まだ話は終わってないよ? おしるこちゃん」
会長はにっこりとしたまま腕を組んで、右足を草むらに蹴り入れている。
私はゆっくりと浮いた腰をペタンと地面につけた。
顔がサッと青くなるのが分かる。
私は本能的に直感した。コレはヤバい、と。
「実は俺の親父、ここの理事長なんだわ」
…え。
「だから、お前みたいな生徒なんて…」
会長は右手で親指を立て、首の前を一直線に切る。
おそらく (学校に居られなくしてやんぞ) という意だろう。
「お分かり?」
無言でコクコクと頷く。
「んで、俺生徒会長だから、この姿一般生徒に見られるとまずいんだよな」
ということは…
「生徒騙してるってことですか!?」
「騙してるなんて、君も人聞きが悪いなあ。 僕はただみんなの期待に応えてあげてるだけだよ?」
ニヤニヤと笑っていたかと思えばさめざめと嘆く、その切り替えの早さは感心物だ。