第11章 嘴平伊之助
~炭治郎~
「俺たちは一緒に行きます。離れ離れにはなりません」
そう珠代さんに断りを入れた時、俺はもう1人の妹のことが頭を過ぎった。雪が朝日に反射するようなキラキラと光る銀髪を持った妹のことを。
「お兄ちゃん!! お姉ちゃん!!」
俺たちをいつも見守ってくれる青い空のような瞳で、太陽のような笑顔で明るく照らしてくれる。だが、その妹はここにはいない。禰豆子も寂しいようで、離れてからというもの夜になると幸子の姿を探し、そしていないと分かると悲しそうに俯くのだ。
「なぁ禰豆子。幸子は元気にしているかなぁ? ……ちゃんとご飯食べて、眠れて…いるだろうか」
幸子は小さい頃、父さんと母さんの間に…そして俺と禰豆子が両脇で手を握っていないと、夜泣きが酷かった。いつも何かに怯えているように父を呼ぶのだ。
「……禰豆子、覚えているか? 茂たちが産まれる前…両手を俺と禰豆子が繋いでないと幸子は目を閉じなかったよな…」
禰豆子は寝ているのか、背負った箱から反応はない。あの頃から何年も時が経っていることは分かっているが、これほど幸子と離れていたことは初めてだ。俺も禰豆子も幸子がいないことに、どこか綻びを感じている。
「…………幸子に早く会いたいなぁ。なぁ、禰豆子」
俺たちの大事な妹は元気だろうか…。次の仕事に向かう今、俺が思うことは幸子の無事…それだけだった。