第16章 私に向けられていた刺客と柱たち
「童磨…鬼舞辻はその鬼をそう呼んでいました。上弦の鬼です。恐ろしく異質な雰囲気を持つ男の鬼…それ以外のことは何も」
「……」
私の言葉に胡蝶さんは何も言わず、手を私から離した。そして、彼女はそうですか…と呟くと、私に普段通りの笑みを見せる。
「診察は以上です。明日か任務に当たってください。見送りはできませんが、これからも頑張ってくださいね」
この瞬間、胡蝶さんの心が私から離れてしまったとことを感じ取った。もう何を言ってもこの人には届かない…私はぐっと唇を噛み、立ち上がった。
「……お世話になりました…」
診察室から出ようと扉に手をかける。すると、後ろから胡蝶さんの声が聞こえた。
「……私からも一つだけ。今朝方取らせていただいた検査結果ですが…前回よりも禰豆子さんに近づいています。あまりその能力を使いすぎないでくださいね」
彼女の言葉に思わず振り返るが、そこに胡蝶さんの姿はなかった。いつの間にか開かれていた別の扉から、風が入ってくる。私はその扉に大きくお辞儀をし、部屋を出た。当分、私が彼女に会う機会はなさそうだった。
「…お姉ちゃんに近づいているのか…」
このことから分かるのは、私は着実に鬼に近づいているということだった。
「いや…もしかしたら…もう…」
私は目の前に差し込まれた光を見た。もし…もしそうなっていた場合…確かめる手段は…一つだけ…!!