第11章 嘴平伊之助
「…………あ……幸子ちゃぁぁぁぁぁんんん!!!!!!!」
その沈黙を最初に破ったのは我妻さんだった。我妻さんは私に体全体で飛び込んできて、私は咄嗟に横へと避ける。
「へぶぅ!!」
「ごっ、ごめんなさい!! 大丈夫ですか我妻さん!!」
任務が一緒だったのだろうか? まぁ、兄も我妻さんも元気そうでなによりだ。ふが、と声がして振り返ると、姉がぎゅっと私を抱きしめた。
「久しぶり。お姉ちゃん」
少し見ない間に、表情が豊かになったような気がする。姉は私の顔をまじまじと見て、そして私のお腹を触る。怪我していないことを確かめているのだろうか?
「…大丈夫だよお姉ちゃん。ありがとう」
鬼になったとしても姉は姉のようだ。小さい頃、よく怪我をして帰ってきた私に姉が叱りながらこうしてくれたことを思い出す。
「幸子!!」
兄が私を嬉しそうに呼び、姉と共に私を抱きしめた。わたしは2人の腕の中に挟まれて、ようやく帰ってきたような気持ちになるのだ。
「ただいま…お兄ちゃん、お姉ちゃん」
「ああ…。おかえり、幸子」
私たちが3人で笑い合っていると、後ろから我妻さんがにゅっと現れた。
「………お前…そう言えば、幸子ちゃんも………許さねぇ…!!!!!!」
「ま、待て!! 話を聞いてくれ善逸!!」