第11章 嘴平伊之助
藤の花の家紋の家。それは鬼狩りに命を救われた一族であり、鬼狩りであれば無償で尽くしてくれる場所。その門の前に私はいた。
「ココデスワ」
「ありがとうスイレン」
私は綺麗な毛並みの鎹烏…スイレンにそう告げ、藤の家紋が入った扉をノックした。スイレンは次の任務に備えた兄を迎えに行けと私に告げた。兄と姉のことが気がかりだった私は彼らに会うことが出来ると3日かかる道中を2日でここまでたどり着いた。
「……はい。お待ちしておりました。鬼狩り様でございますね。お早いお付きでなによりでございました。ご案内させていただきます」
1日早く着いてしまったというのに、この家の家主は嫌な顔ひとつせず、私を兄達のいるところまで案内してくれる。
「………うらめしやー!!」
しかし、兄達の部屋が近づくにつれ、ドタバタと大きな音も近づいてくる。…もしかして新手!? 私は刀を握り、家主に声をかける。
「……兄達の部屋はあそこで間違いないですか?」
「はい。お連れ様もご一緒のお部屋に案内させていただきました」
お連れ様というのは姉のことだろう。私は頷く。
「案内していただきありがとうございます。ここまでで大丈夫です」
一応、混乱を招かないように家主にそう告げると、家主はペコっと綺麗なお辞儀をして廊下の角へと消えて行く。
「…………煉獄さんとの稽古後…初めての戦闘になるかもしれないのか…」
私はブルリと身震いすると、気配を消してゆっくりと襖に手をかける。部屋の中には兄と姉の他に…声が2つ多く聞こえる。そして、ピタッと音が止んだ。…気づかれたか!! 私は意を決して、襖を開き中へと飛び込んだ。
「お兄ちゃん達から離れなさ……い……」
私は部屋の中の光景にぽかんと口を開けた。そこには、兄と姉が我妻さんに追いかけられている光景だったからだ。