第10章 超えるべき壁たち
開始早々、煉獄さんは技を使ってきた。
「…っ!!」
私はそれを同じ技で打ち返し、その衝撃で後ろに下がる。
「間合いなど取らせる余裕など与えんぞ」
煉獄さんが続けて、技を打ち込む。
「炎の呼吸…壱ノ型 不知火」
「炎の呼吸…弍ノ型 昇り炎天!!」
咄嗟にしてはよくできたと思う。煉獄さんの技を相殺まではいかなかったが、威力を抑えることに成功する。
「………ゴホッ!!」
まぁ、それでも熱いし痛いことには変わりないのだけど。
「………ふむ。俺は昇り炎天を君に見せた覚えはないのだが…」
不思議そうに首を傾げる煉獄さん。その通りだ。私が真似したのは、数年前、元炎柱の人がしていた昇り炎天だ。それを煉獄さんに伝えると、納得したように頷いた。
「なるほどな前任者か!! どうりで技が荒いわけだ」
……何気に前任者を貶しているけど…それは大丈夫なのか? 私はどう反応を返せばいいか分からず、その話は聞かなかったことにした。
「前任者は一つ一つの技は荒いが、彼は歴代で最も自分の技を多く持っていた。俺は指南を受けることは叶わなかったが、そうか彼は君に教授していたか!!」
うむうむと満足げに頷く煉獄さんに、私はすっかり困ってしまった。指南といっても、私は彼に呼吸を常日頃行うことぐらいしか叩き込まれていない。今のは私の見稽古をした際の物真似なのだ。
「………ふむ。なるほど! 目がいいと思っていたが、君が言うことが本当ならば思っていたがそれ以上だな」
観念して私がネタばらしをすると、より関心したように頷く煉獄さん。…いえ…あの…そんなに大したことでは………
「では、続けようか」
そして、急に私の目の前に現れる煉獄さん。
「これらを全て避けて見せよ!!」
煉獄さんの瞳は、驚愕する私の顔と共に全てを焼き尽くすような炎も写していた。