第10章 超えるべき壁たち
さて…と2人の姿が完全に見えなくなったところで、私は刀を持った。
「………殺されに行きますか」
私は大きくため息を吐いた。そして、栗花落さんと鞠蹴りした時の荒い息が落ち着いたことを確認して、庭へと戻った。
「胡蝶のところの継子か。君達は仲が良かったのだな」
そこには既に自分の刀を持った煉獄さんがいた。私は苦笑しながら、首を振った。
「栗花落さんとは最終選別の時に顔を合わせた程度ですよ。それに、あの鞠蹴りのやりとりで仲良くしていたと思われたのですか?」
私は私の近くにある穴があいた木々を指さした。彼女は手加減という言葉を知らないようだった。最初に鞠を蹴った時、命の危機を感じて栗花落さんが蹴り返した鞠を必死で避けた。その時に出来た穴だろう。まぁ、その他にもできた穴は沢山あるが…。
「ふむ。では、準備はいいか?」
相変わらず、人の話を聞かない煉獄さんは私にそう言った。栗花落さんの話を切り出しながらも、この人の頭の中はこれから行う鍛錬のことしかないのだ。私は再び苦笑して、刀を抜く。…この鍛錬で煉獄さんが自分の刀を使うのは初めてだ。木刀でもまともに当たれば気絶する威力。それが真剣になるとどうなるのか…。私は自分の体が震えるのが分かった。
「恐怖で竦んでいるのか?」
そんな私の様子を見て、煉獄さんが炎を上げて私に問いかける。…何を今更なことを。こっちは、もう何度貴方に失神させられたと思っているのだ。
「まさか!! 武者震いですよ!!!!!」
そして、私は向かってきた煉獄さんと刀を合わせた。