第10章 超えるべき壁たち
胡蝶さんが満足げに微笑んで、栗花落さんを連れて屋敷を後にしようとした際、私はその背に咄嗟に声をかけた。
「あ、栗花落さん!!」
振り替える栗花落さん。何を言おうと私はあたふたして、そしてようやく、
「また…鞠蹴りやろうね!!」
と言った。まるで小さい子が次の遊びの約束をするみたいだ。私の言葉に栗花落さんは何も言わず、胡蝶さんの後ろを着いていく。
「……………ちょっと図々しかったか」
ちょっと落ち込んだ私は項垂れて、すごすごと屋敷へと戻ろうと顔を上げた。
「………ん?」
私の目に映ったのは、銅貨が上へと弾き飛ばされるもう3度目になる光景だった。私は思わず叫んだ。
「…………またね!! 栗花落さん!!!!」
すると、彼女の横に結んだ髪の毛がふわっと浮き、彼女の紫色の瞳と視線が合わさった。彼女は最初に会った時のようににこっと笑い、私に小さく手を振った。
「っ!! 任務前なのに疲れさせちゃってごめんね!! 今日はありがとう!!」
私は彼女の倍、手を振り返した。それは彼女達の姿が消えるまで続けたのでした。