第2章 残酷
「おかえり。幸子」
急いで帰ってみると、私の代わりにお姉ちゃんが後片付けをしていてくれた。六太をあやすのに外に出ていたのに。
「お兄ちゃんにお弁当持って行ってくれてありがとね。お母さん、助かってたよ」
後片付けはもうあらかた終わっていた。私は姉にお礼をいい、彼女の悴んだ冷えた手をそっと握った。
「外に出ていたのに温かい。走って帰ってきたの?」
「うん。後片付けがまだだったし、お兄ちゃんがいないから茂たちを見とかなきゃでしょ?」
この働き者の姉は、気づいたら私の仕事までこなしてしまう。私は氷のように冷たい姉の手を自分の頬に当てた。ひやりとした手が、私の余分な熱を奪ってくれる。
「そんなことしたら、幸子が寒くなっちゃうよ」
「いいの。私よりお姉ちゃんの方が必要だから」
すると、姉は綺麗な顔をさらに綺麗にさせ、くすりと笑った。
「ありがとう幸子」
この姉と言い、兄と言い、何故こんなにも優しいのだろうか。私は彼女を抱きしめて言うのだった。
「こちらこそありがとう。禰豆子お姉ちゃん」